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ふと、「人生の最後に映画を観るとしたら、どの映画を観るだろう」と考えた。
ガンに罹って体力がどんどん落ちてくる。妻は気丈にふるまい、笑顔を見せてくれるが、どこかよそよそしい。娘達にはパパは病気だとは知らせているが、ガンだとは知らせていない。娘たちの行く末が気にかかる。 ふとそんな時、映画が観たくなる。なんとなく体のどこかでこれが最後の映画になることを予感している>。(例えばの話ですよ)span>
そんな時、心に寄り添ってくれるような映画はなんだろう?コメディーは避けたい。一時的に気を紛らわせるようなことはしたくない。そんな気分の時の映画はなんだろう?「ノーバディーズ・フール」という映画がある。
ポール・ニューマン主演の1994年の映画。監督は「クレイマークレイマー」のロバート・ベントン(この人は昔「俺たちに明日はない」の脚本で名を馳せた人)
アメリカの地方都市を舞台にした「スモールタウン物」
私には、街のあちこちに雪が残る冬の雰囲気が酒田の八幡地区あたりに見える。
腕前もあやしい初老の土木作業員を演じているポール・ニューマン、膝に故障を抱えながら、ブルース・ウィルス演じる建設会社社長に、人のやりたがらないような仕事を回してもらって、何とか日々を生き延びるような生活。
その一方で、この社長を賃金不払いのため訴え裁判も起こしているが、仲間の弁護士の能力不足であっさりと負けてしまう。いつもそんなことを繰り返しているのだ。裁判に負けたその晩も裁判の敵の社長や弁護士とポーカーをするような関係だ。
社長は町一番の美人(メラニー・グリフィス)の妻がいながら、浮気を繰り返している。60歳の男が30代後半の亭主持ちの美人に声をかける。「万馬券が当たったら、一緒にハワイにでも行かないか?」彼女はまんざらでもなさそうだが、うんというわけではない。去っていこうとする男に女は言う。
「男の中の男ね」
「ありがとう」
「誉めたわけではないわ」
「・・・・」
男には別れた妻との間に息子がいる。関係は最悪。父親失格のわがままな父親が、孫を通して息子との関係を少しずつ修復し始める・・・
地味な役者が演じたら、暗い地味な映画になりそうなところだけれど「明日に向かって撃て」や「暴力脱獄」等で見せてくれたウィットに富みながら矜持が感じられるあの笑顔で、この映画をより魅力的なものにしてくれている。
私生活で、実の息子を酒とドラッグで亡くしているポール・ニューマン。息子との微妙な関係をリアルに演じて見せてくれる。このノース・バスという地方都市にこの男が本当に生活しているような存在感がある。
女が、男にハワイ行きのチケットを2枚手渡す。浮気に懲りない亭主へのあてつけである。男は女と手に手を取って亭主と浮気相手、そして友人達の目の前を悠然と出て行く。
車の助手席で肩を震わせて泣いている女に男は言う。
「本気でハワイに行く気だったよ。本気になった。君はこの町で一番の美人だ・・・ハワイでもね」
「・・・・・・・」
「でも、俺はおじいちゃんだ。息子もいる。それにあいつらの友達なんだ・・・・」
「男の中の男ね」
「前にも言われた」
「今度は誉め言葉」
この場面の、ポール・ニューマンとメラニー・グリフィスがいい。
後は、世界がこの街の住民をやさしく包み込んでくれるようなエンディングにゆっくりと流れていく。
ラストシーンは、「暴力脱獄」クールハンド・ルークを思い起こさせる。
ポール・ニューマン晩年の傑作。ベルリン映画祭の主演男優賞を受賞している。
音楽もすばらしい。
人生最後の映画としては、まさにふさわしい。観た後に、今まで自分の人生に起きた素晴らしい出来事を、忘れていたささやかではあるが素晴らしい出来事を、思い出させてくれるような、そんな映画です。
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